II 言説の規則性 II 言説形成(pp. 63-79) 担当:By

 II 言説形成

  • 諸言表のさまざまな関係と、それらが提示される際にさまざまな形態によってとる統一性を記述することについて。記述の慣習的な仕方は根本的に問い直されなければならない(II - I節)。
  • 言表が結びつき統一体を形成する仕組みを記述するための4つの(かつて正しいと思われていた)仮説。それぞれに難点があり、破棄され、あるいは修正が加えられる。

 

4つの仮説

  1. 諸言表は、それがかかわる対象の同一性によってグループ化される。
  2. 諸言表は、その言表行為の形態・スタイルの同一性によってグループ化される。
  3. 諸言表は、そこで作用する諸概念の体系の同一性によってグループ化される。
  4. 諸言表は、それがかかわるテーマの同一性によってグループ化される。

難点

  1. 対象は、その名において諸言表のそれぞれが語ること=発言(パロール)によって構成されてきたのであり、その逆ではない。さらに、諸言表の総体がただひとつの対象に関係づけられるわけではない。諸言表が自らの相関物とする対象は、それぞれにおいて異なったものであった。
  2. 言説をコード化された規範的言表行為のシステムによって定義しようとすると、捉えたいと思っている統一体のごく一部しか記述することができない。
  3. 諸言表の間で、諸概念の総体は必ずしも共有されていないし、両立しない。すべての概念を整合させるような普遍的な諸概念の総体を作ろうとしても、うまくいかない。
  4. それぞれを可能にし整合させている概念・分析・対象領野が異なるような複数の言説が、同じテーマ系をつくる出発点になっていたり、一方、同じ概念・分析・対象領野から出発して異なるテーマ系がつくられ得たりするため、ひとつの言説の個別化の原理としてテーマは不適当である。

修正された仮説

  1. 言説の統一性は、多様な対象が同時的・継起的に出現しては絶え間なく変換を被るような空間からなる。そこにおいて、諸言表の関係は、多様な対象がさまざまな操作を受ける際に従う諸規則によって記述される。
  2. 言説の統一性は、多様な形態・スタイルの同時的・継起的な出現を可能にする諸規則の総体によってもたらされる。諸言表の関係は、互いに異なった形態・スタイルをとる諸言表が共存する仕方を分析することで記述される。
  3. 言説の統一性は、多様な概念の同時的・継起的な出現、消失の作用や、互いの隔たり、両立不可能性を分析することで求めることができる。
  4. 言説の統一性は、多様な概念・分析・対象領野の選択やさまざまなテーマの可能性からなる。諸言表の関係は、こうした選択地点の分散を標定することで記述される。

 

  • 明確な概念や、切り分けられたものの永続性を前提する記述から、言表の分散のシステムそのものの記述へと移行しなければならない。仮説の修正はそうした移行を反映するものである。
  • 修正によって得られた新たな4つの仮説が、以後の言表のシステムの分析の出発点となる。そうして分析を進めた後においても従来の思想史における慣れ親しんだ概念が有効であり続けることは、もはや保証されない。